10年ほど前、研究者として海外(欧米)で働いていたことがある。
その時、日本との待遇の違いにまず驚いた。
職場の環境も、待遇も、社会的な地位も、日本より欧米のほうが全然良かったからである。
その結果、生産性の高い仕事ができ、
自分の中でも驚くほど研究の成果をあげることができた。
出勤時間も自由、研究室には広い個室があり、自由に使える。
考える時間が十分あり、創造的な仕事ができる環境だった。
海外勤務時代に、
欧米メーカーの研究者の知り合いがたくさんできたが、
給料は多い、裁量は与えられている、研究に集中できる、
との話で、メーカーの研究者の待遇も良さそうだった。
世界から見て、日本のメーカーの研究者・技術者は冷遇!?
ところが、成果をあげて日本に帰ってきて、
日本のメーカーに行こうかと思い、知り合いに色々聞いてみたら、
相変わらず日本企業の研究者、技術者は冷遇されているようだった。
出勤時間は、裁量労働なのに、出勤時間が暗黙のルールで決まっていたり、
狭いオフィスで上司からPCの画面をのぞき込まれたり、
異様に会議が多かったり、会議の前の「根回し」まで必要だったり、
出張精算とか、勤怠管理とか、研究とは関係のない事務作業が多かったり、
(ー部門だけみれば効率化・費用削減でも、組織全体では仕事量が増えて効率悪化、結果的に費用増大なのにね。なんでこんなこともわからんのだろう?)
しょうもない、そんな話ばっかりであった。
実際、わたしが出国前に周囲にいた優秀な研究者たちの中には、
そんなメーカーに嫌気がさして、
独立して研究とは別のことをやっていたり、
M&Aのコンサル会社に転職して年収数千万円稼いでいるのもいた。
そして彼らにも会って話を聞いてみたら、
研究者や技術者に対する日本の企業の待遇の悪さについて嘆いていた。
研究の道もできれば続けたかったが、あまりにも待遇がひどかったので、
辞めて別の道に進むことにした、ということである。
研究者・技術者の冷遇は、日本にとって損失大
別の道で活躍しているから、
本人たちにとってはそれで良かったのかもしれないが、
日本にとってはものすごい損失だな、と思う。
彼らは若くして、日本を代表するメーカーのエースの研究者で、
わたしから見てもある有望な研究分野で、世界の第一人者になろうとしていた。
そういった人材が、「企業で冷遇されている」と思い、
別の道にすすんでいくのが、なんとももったいなくて、悔しい。
日本の将来が心配になってくる。
日本のメーカー、技術は世界トップクラスだといわれているが、
それは何十年も前の先輩方が戦後の高度成長期に築き上げてきたものである。
産業構造が変化する中で、昔のやり方に固執し続けると、
やがて変化についていけなくなる。
先輩方の「貯金」を使い果たす前に、メーカーの「体質改善」を!
それでも先輩方が築き上げてきた「貯金」があるので、
しばらくはそれで技術的優位を保っていられる。
やがて貯金を使い果たし、だれもが「限界が現れた」ことに気づくだろうが、
その時に気づいても遅すぎる。
一刻も早く、日本のメーカーは体質改善が必要だ。
日本のメーカーの「体質改善」とは?
それは、「新しい考え」を受け入れることである。
決して、巷で言われるような、年配者を辞めさせろと言っているわけではない。
年配者でも、新しい考えをもった人はたくさんいる。
新しい考えを持っているがために、冷遇され、出世できない人もたくさんいるだろう。
そういう人たちが、「古い考えの人」から解放され、
生き生きと活躍できることが必要である。
逆に、若い人たちの中でも、
古い考えに凝り固まっている人もいるだろう。
そういう人たちも、一刻も早く古い考えから
解き放たなければならない。
一番厄介なのは、古い考えを持ち、それが正しいと思い
変えることができない経営者、部課長クラスがいる場合である。
そういう人たちが、経営に携わっている限り、
メーカーは変わることができない。
そういった人たちは、古い考えが正しいと思っている以上、
会社の経営から離れたほうが良い。
古い考えの具体例については、また後日に!