今から10年以上も前、海外の研究機関にいた時、国内外の多数の企業の方々や研究者たちと転勤制度について議論をする機会があった。
その時出た結論は、「日本特有の転勤制度なんて無くしたほうがいい」だった。
あれから10年以上たって、いまもその考えは変わっていない。ちょうどいい機会だから、「働き方改革」で転勤制度も一気になくしていく方向で議論をすすめればいいのにと思っている。
外国人からは「全否定」の転勤制度
当時は日本人研究者数人と、海外の研究者数人とで、いつものようにニッポンの話で盛り上がっていた。たいがいは、「悪いところもあるけどいい所いっぱいあるね。ニッポンはクールだね。」という流れになるのだが、「転勤制度」に関しては外国人に「全否定」、日本人も外国人に同意、こりゃ駄目だという結論になった。
「日本の転勤制度はおかしい、変だ」
「聞けば聞くほど無駄な制度」
「何のためにするのか意味不明」「転勤しなければ成り立たない会社制度に問題がある」
「転勤の理由はすべて回避可能なものばかり」
「非合理的」
「転勤の理由が後づけっぽい?」
「転勤制度は時代遅れだよ」
「家族のことを考えてないんだね」
「単身赴任?ありえない、クレイジーだよ」
「ものすごいパフォーマンスの悪いことしているよね。そりゃ生産性下がるわ」
「やってられない、私だったらすぐ辞めるわ」
「というか、私たちの国だったら大問題だよね」
まぁ、散々言われました。わたしたち日本人研究者でも、やっぱり転勤は「無駄だな」って思いますもん。ちなみに転勤制度は日本独自の「慣行」で、海外にはほとんどないそうです。これには驚いたし、素直にうらやましかったです。そして彼らの生産性もすこぶる高い。一人当たりのGDP、日本よりもものすごく高いんですよ。
当時、人事に同期がいたので聞いたけど、人事部でバリバリ活躍していた彼ですらやっぱり「転勤は無駄だよなぁ」って(←あんたが言うなよ~(笑))
多くは「悪い転勤」
私自身、複数の国内大手メーカで何回か転勤を経験してきたが、その中には、「良い転勤」と「悪い転勤」があった。
良い転勤は、自分がこれをやりたいからと言って申し出た転勤。留学という形だったが、これは自分にとっても会社にとっても良い影響をもたらした。自身はキャリアアップになったし、会社はその研究成果でかなり儲けたし、後に続く開発も進んで社会に役立っている。
悪い転勤は、本人の都合や意思を無視した会社都合の転勤。自身や家族に大きな負担がかかるだけで、どう考えても会社にとってもトータルで考えるとメリットは薄い(人事部の社員は仕事した感でいっぱいだろうが…)。この悪い転勤が日本の会社の多くを占めていることが、働く人とその家族を疲弊させて、最終的に会社の生産性低下にもつながっていると感じている。
わたしの周囲には、悪い転勤を仕方なしに受け入れている人ばかりであった。その人の都合や事情も考慮せず、一方的に何年かおきに転居を伴わせたりする転勤制度なんて、どう考えても時代遅れで世界からも取り残されている。多くの会社では、こうした悪い転勤がまかり通っている。
わたしもこのような転勤を受け入れたことがあったが、いい加減転勤のメリットを感じなくなり、非合理的で非効率的な制度に嫌気がさして会社を辞めた。正直わたしもすごく迷ったが、今では独立して大正解だったと思う。
しかし普通は、なかなか辞められない人のほうが多いと思う。だから、転勤なんて早く無くしたほうがいい。今後、転勤制度が社会問題になって、悪い転勤はなくなっていくだろうが、日本の生産性低下は深刻だから悠長なことは言ってられない状況。転勤廃止も早いに越したことはない。
居住転居の自由
居住移転の自由(きょじゅういてんのじゆう)とは、自己の欲する所に住所または居所を定め、移転し、自己の意思に反して居住地を移されることのない自由。
日本国憲法第22条第1項では、居住移転の自由を有すると定められている。企業の就業規則が日本国憲法よりも優先されるのはどう考えてもおかしいよなぁ。
今まで当たり前だと思っていたことが、変だ、当たり前でないと早く気付いて、変な仕組みを早く無くしたほうがいいと思う今日この頃です。